大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和31年(れ)16号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人奥田福敏の上告趣意及び同村上信金の上告趣意第三点について。

所論は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(本件犯行と、本件犯行の前日岡山県において行われた所論強盗の行為とは、その時期、場所、態様からいって、別個のもので、本件犯行は上記強盗による賍物を舟で運搬し来り神戸で陸揚しようとする際に即ち右強盗とは別個の機会になされたものである。それ故、本件犯行に対し、刑法二三八条を問擬して準強盗傷人と一所為数法の関係にあるものとし、先に確定判決を経た、強盗傷人の所為と連続犯の関係にあるとして第一審において免訴となった強盗罪と同じく、これを免訴すべきであるとの所論の採るを得ないことは、原判示のとおりである。弁護人村上信金の論旨に引用する判例は、本件に適切でない。)

弁護人村上信金の上告趣意第一点について。

原判示は、事実については一審判決を引用し、証拠については公判廷の自白を採用したものであると解することができる。それ故、原判決には所論の違法はなく、引用の判例に反する判断をした点も認められない。

同第二点について。

本件前科の事実は、単なる量刑上の事柄ではなく、刑罰法令適用上必要とせられる事項である。そして原審は、前科の事実について第一審判決の判示事実を引用し、これに刑法四五条後段等を適用した上自ら量刑をしているのであるから、原判決には所論の違法は認められない。引用の判例は本件に適切でない。

同第四点について。

牽連犯は元来数罪の成立があるのであるが、法律がこれを処断上一罪として取り扱うこととした所以は、その数罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があり、しかも具体的にも犯人がかかる関係においてその数罪を実行したような場合にあっては、これを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑をもって処断すれば、それによって軽き罪に対する処罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の単一性をも考慮して、もはや数罪としてこれを処断するの必要なきものと認めたことによるものである。従って数罪が牽連犯となるためには、犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものたることを必要とするのである(昭和二四年(れ)二〇六三号、同年一二月二一日大法廷判決、集三巻一二号、二〇五三頁参照)。然るに、本件においては、所論免訴となった強盗罪と本件犯行とは、その罪質上通常手段又は結果の関係にあるものとは認め得ないものであるから、両者を牽連犯とみることは出来ない。従って原判決には所論の違法はなく、引用の判例に反する点も認められない。

よって刑訴施行法三条ノ二、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例